人のセックスを笑うな

 「人のセックスを笑うな」という映画があって、実はその前に原作の小説があった。私がその文庫本に手を伸ばしたのは、このショッキングなタイトルと帯に付いていた「映画化決定」という文句のせいだ。基本的にタイトルの如何に関わらず、邦画で映画化される原作本は読んでおきたい。私の場合は読んでから見ることが多い。
 ところがこの映画は映画館で見ることはなく、先日WOWOWでの放送を録画して、ようやく見た。上映館が少なかったこともあったが、今となって思い出せば、それ程映画館に行ってまで見たいという気持ちにはならなかったようだ。それどころか、今回映画を見るまで、どんなストーリーだったのかを覚えていなかった。さらに言うと、映画を見ても、「こんなストリーだったっけ?」という感じだった。
 映画を見たいという気持ちが起きなかったのは、原作が面白くなかったからだろう。あまりにも面白くなくて、ストーリーすら覚えていなかったのだ。基本的に原作が面白くない場合、その映画が面白いことはまずない。案の定、映画もつまんなかった。冗長的で無駄なシーンに時間が結構割かれているので、見ていてイライラする。また、見せ場もなければ。メッセージ性もない。
 正直、この作品はタイトルのインパクトだけの小説で映画だ。これがもし他のタイトルだったら映画にはなっていないだろうし、原作の出版すらされていなかったかも知れない。それほど、「セックス」という言葉のインパクトはすごい。ネーミングの力を改めて知らされた。原作は文藝賞を受賞しているらしいけどね。
<初出:秀コラム 第1622話>

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