東京少女

 夏帆演じる主人公の女子高生、未歩があるビルの階段で地震が起きた瞬間に、携帯電話を落としたところ、その携帯電話が約百年前の明治時代にタイムスリップをしてしまう。そこで携帯電話を拾ったのが、小説家を志す、夏目漱石の弟子の宮田時次朗という名の青年だった。同様に地震が起きた瞬間に頭上から携帯電話が落ちてきた。
 落とした携帯電話がタイムスリップしてしまったとは知らない未歩は、その携帯電話に電話を掛けてみる。一方、奇妙な箱を拾ってしまった時次朗は、突然その箱が鳴り出して驚く。適当に触っていたら、どこかのボタンを押したようで、途端にその箱の中から女性の声がした。未歩の「携帯電話」という説明を「けったいな電話」と聞き間違える。
 電話は月の出た間しか通じない。月が雲に隠れてしまうと電波が切れてしまう。「アンテナがないのに明治時代に携帯電話が使用できるのか?」と突っ込んではいけない。そもそも、携帯電話がタイムスリップする時点で現実の世界とは違うのだ。こうして何度か話をするうちに未歩は時次朗に惹かれていった。
 そんな二人は約百年の時間を隔てて、デートをする。日比谷公園の松本楼で同時(?)にカレーを食べ、銀座を歩く。今も百年前もある店を見つけ、時次朗はそこで未歩へのプレゼントを購入し、それを未歩が受け取りに行く。こんな時間差を利用した仕掛けが私は好きだ。お互いの顔を知ることなく、ただ声だけの関係だが、携帯電話なのだから、写メを送って、お互いの姿を見せるような展開があった方が、よりリアルな気がした。
 エンディングは、過去において未来、運命を変えられるか?、という展開を見せる。なかなか良い映画だった。我が娘はこの映画を見て、涙したらしい。
<初出:秀コラム 第1623話>

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